「何かのパーティでヴィッキーとイーがデュエットをしているのを見て、とても絵になるカップルだと思った」。それがきっかけで配役に決まったという二人。
設定は幼なじみ。引越が多かった私には、子供の頃からずっと同じ官舎で育ったなんて羨ましい甘い響きです。
フォ・ジェンチイ監督は北京電影学院美術学部卒。映画美術を担当後、監督に転身。日本で大ヒットした『山の郵便配達』(99)は、中国映画ファンを確実に 増やすことになった名作ですが、中国では公開されずじまいだとか。日本での評判の高さで逆輸入的に評価されたそうです。北京では、中国語の授業中にこの映 画を見たこともあります。
『初恋の想い出』は、新聞に掲載されていた実話に基づいていますが、下手をするとお昼のメロドラマかドロドロになりかねないところですが、そこはフォ監督。映像美に力を入れて撮ったと語っています。
自分たちを「ロミオとジュリエット」になぞらえて様になるカップルという点では申し分のない主役ですが、アイドルとは言え主演の二人は撮影時すでに30歳 近かった(共に1976年生)。にも関わらず、10代の初々しさまで演じられるのはやはり計算された映像美によるものでしょう。日差し、遊園地の乗り物、 建物まですべてが雰囲気を作り上げ、フォ監督にかかれば陽に干したシーツだって立派な愛の小道具になるのです。
そしてフォ監督作品の世界を作り上げているのは脚本家であり、夫人でもあるスーウー。監督に適した原作を選択し、そして脚本化するというまさに二人三脚です。
欧米の映画だと80sはダサイ、そして日本ではバブルの時代として描かれたりする年代ですが、この作品では中国の80年代を丁寧に描いています。そのひとつが主人公二人の着ている衣装。実は監督と夫人の私物だそうです。
私は一度フォ監督にお会いしたことがありますが、穏やかで暖かみのある方でした。
今年の東京国際映画祭ではコンペティション部門の審査員を努めるそうです(監督夫妻の『故郷の香り』は2003年の東京国際映画祭でグランプリと最優秀男優賞(香川照之)をダブル受賞しています)。
このサイトでも中国女性の怖さはよく書いていますが、ホウ・ジアの母の厳しい性格の描写が秀逸。そして母に背けない息子。一人っ子が多いせいか、中国の男 性は臆面もなく母のいいなりの人が多いような。。。それはマザコンと呼ばれるものとはまた質が違う、それは優しさから来るものだと思うのですが、これは研 究のしがいがあるテーマですね。ただ中国もこのまま発展を遂げ、都市化が進むと家族の親密さが薄れてしまうのかもしれません。それよりも、出稼ぎで親が長 く家を空けている地方の家庭ではどのように親子が関係を築くのかが気になります。
この映画の根底には、ロミオとジュリエットのような境遇であっても生きていればこそ、という願いが込められているのでしょう。死を選ぶ方がずっと楽だった 二人が、生きるという長く辛い選択をしたからこそ雪解けがあったのです。恨みを持ち続けるのも、後悔をする生き方も辛い。チー・ランは、最初「愛する人た ちに苦しめられる」と言ったけれど、最後に幸せは心の持ちようとも。「好きな人が同じ街にいる、同じ世界にいるだけで幸せにもなれる」そんな境地に至った 彼女があまりに切ない。

















ジョニー・トー監督は一部に絶大な人気があり、映画祭での上映では券を取るのも至難ですが、配給される作品となると数はあまり多くありません。お馴染みの 俳優が登場して時に他の作品とキャラが混同する男臭い黒社会ものと、サミー・チェンとアンディ・ラウのカップルで描く軽妙なラブコメ・シリーズ(もう作る ことはないようですが)と両極端な印象がありましたが、今度の『僕は君のために蝶になる』は勝手が違います。幽霊が出てくる。。。と言ってもホラーではあ りません。
ふとした行き違いや、意地の張り合いで大事な関係を修復する機会を失うことがあります。誤解や後悔を残したままで、相手と一生和解する機会がなかったとし たら。。。それは残された側だけではなく、逝かざるおえなかった側にも未練として残り、文字通り「浮かばれない」存在となってしまうのでは。しかし現実に は聞きたい答えを知る術もなく、何とか日々を重ねていくしかないのです。この作品ではヨウ・ヨン演じるアトンの父や、ウォン・ヤウナン(『ハリウッド・ホ ンコン』、『AV』)演じるエンジャを翻弄させるミステリアスなシューといった存在が媒介となって、同時にそれぞれも傷を癒す、俗に言う「見えない力」を 見ているような面白さがあります。
【アジアの風】前売券が発売になることもあり、東京国際映画祭で上映される中華圏の映画に関して書きたいところですが、映画祭は数多くの映画のプリントが あらゆる場所から集まるため、直前までなかなかまとまった試写を見る機会がありません。今年も「アジアの風」部門では中華圏作品が何本かかかります。その 中の1本『私のマジック』を紹介します。主演俳優はインド系、言語はタミール語なので中華圏映画とは言えないかもしれませんが、監督はシンガポールの華 人、エリック・クーです。シンガポールに関しては、こちらのサイトでも8月号で『歌え!パパイヤ』を紹介した際に触れています(サイトの下の「8月」をク リックするとバック・ナンバーをお読みいただけます)。また、10月4日発売の「キネマ旬報」10月下旬号にシンガポール映画とその社会背景に関する記事 を書きましたので、そちらも是非ご一読下さい。
イーキン・チェンとカリーナ・ラウ主演と聞くと『恋の風景』(03)では結ばれないカップルだった二人を連想しますが(この作品ではリウ・イエがとても チャーミングですが)、今回の映画祭で新作として上映される『パティシエの恋』では二人の恋は成就するのか?『恋の風景』ではジミーが描きおろしたイラス トレーションが効果的に使われていましたが、『パティシエの恋』ではキャリー・チョウのイラストが、カリーナ演じるジルの「不思議ちゃん」度を高めるのに 一役買っています。お馴染みのエリック・ツァンも出ていますし、香港映画のキュートさがあると言えばそうなのですが、男性監督たち(共同監督)の目から見 たキュートなのかもしれません。また、一時は日本の華流ブームを担うと言われたモデル出身のフー・ビンも出演しています。彼出演の日本の連ドラ「OLにっ ぽん」の放送も始まり、ブレイクなるか?
もう一作は『草原の女』。草原とは言ってもロケ地は冬の内モンゴル。シーンはほぼ雪とその中に点在するゲルのみ。新作と言っても2000年の作品。内モン ゴルで砂漠化が進んでいることを考えると、今となっては撮れない貴重な映像かもしれません。モンゴル草原が舞台の映画は多く『モンゴリアン・ピンポン』の ような秀作もありますが、ここまで雪の内モンゴルで撮れたのは地元出身の監督ならではでしょう。寒がりの私は撮影の過酷さを想像しただけで絶対無理。。。 ハスチョロー監督の秀作、『胡同の理髪師』は2月号で紹介しましたが、監督のルーツと進化が見て取れます。男女の役割がはっきりしている生活で母子だけ で生きていくことの苦労、そしてよそ者への警戒。今となっては子供を街へやらざるおえない、草原で生きていくことがもう出来ない自然・経済状況の変化で、 屈託のない子供の幸せを考えさせられます。





