新年快?!昨年は心に残る作品との出会いがあったでしょうか。今年も中華圏映画は話題作、小粒で光る小品など公開作が続きます。どうぞおつきあいください。
中国で公開をされたのは2007年末。最初にこの映画のビジュアルを見た時は抗日戦争物かと思いました。いくら中国随一のヒットメーカーで、日本でも『女 帝[エンペラー]』(06)や『イノセントワールド-天下無賊-』(04)などが公開されているフォン・シャオガン(馮小剛)監督と言えども、対日本の戦 争をあつかった作品の日本公開はないだろうと思っていましたが、これは1948年の国民党と共産党の中国内戦を描いた映画です。
第二次世界大戦では日本という共通の敵と戦うことで協力体制にあった国民党と中国共産党、しかし終戦後に対立関係は悪化。一時は蒋介石を最高指導者として 統一国家建設に合意しながらも、46年に内戦勃発。この時の兵力は国民党軍430万に対し、共産党軍は120万。しかしながら市民も召集して共産党軍は人 民解放軍へと発展して勢力を拡大、その後国民党は台湾島へ逃れた。これが中華民国/台湾の設立につながり、1949年には中華人民共和国が設立。そして私 たちは現在、台湾映画、中国映画と分けて呼ぶことにも至ったのですね。
「中国映画の全貌2008」でも上映された、ジャッキー・チェンの両親の遍歴を辿ったドキュメンタリー『失われた龍の系譜~トレース・オブ・ア・ドラゴン~』ではジャッキーの父が国民党員だったために身の危険を感じ、子供を残して香港へ逃げたことが語られていました。
ジャッキーは日本軍に、そして内戦によって翻弄された父母のドラマチックな人生の落とし子だったのです。中国返還前の香港では、旅行ガイドさんが大陸のこ とを「共産党」と呼んでいるのを聞きましたが、一定の世代以上には共産党と大陸は同義語なのでしょう。時代が変わった今、『戦争のレクイエム』には香港の 資本も入っています。
大陸で「賀歳片」(お正月映画)の定番ヒットメーカーとなったフォン監督。昨年の東京国際映画祭の特別招待作品として本作が上映された際に来日した際、コ メディしか撮れないという世間の評価を覆したことへの自信をのぞかせていました。中国で絶大な人気を誇り、一般受けするセンスは様々な経験を通して磨かれ たのかもしれません。中央戯劇学院や北京電影学院といった名門の受験に失敗した後、軍を含めいくつかの職を経験。テレビの美術スタッフを経て演出家に、そ こから監督になったという苦労人です。
「男だったら一度は戦争映画を撮ってみたいものさ」と語った監督。駒やゲーム機ではなく、役者やエキストラを動員して実写の戦争ごっこを展開するのは一部 の男の子と元男の子には夢かもしれません。いや、中国映画としては破格の17億円の制作費をかけたのに‘ごっこ’なんて言ってられません。ところがこれで も「ハリウッドの10%程度」だとか。いい加減ハリウッドとの比較はやめた方がいいとは監督も思っているようで、「日本、韓国、中国が一緒に力を合わせて 頑張れば、ハリウッドに負けない作品ができるはず」とも。この作品では韓国映画『ブラザーフッド』を手掛けたチームがSFXを担当。監督曰く「戦争で人が 死ぬことを観客に信じさせるために、その残酷さを伝えなければならない」から。
戦闘シーンを描かずして戦争への強いメッセージを持つ作品もあります。現在公開中の『チェチェンへ アレクサンドラの旅』は、昭和天皇を描いた『太陽』でも特異な才能を持つアレクサンドル・ソクーロフ監督作品。そして先月号でも触れたフィルメックス最優 秀作品賞を受けた『バシールとワルツを』。1982年のイスラエルのレバノン侵攻を真摯に振り返るアニメーションだが、2009年の今、イスラエルのガザ 地区への攻撃で犠牲者は500人を越え、多数の子どもを含んでいることこそ人の手による地獄絵だ。
かけたお金の大小に関わらず、戦闘シーンを見慣れてしまったからかもしれませんが、『戦争のレクイエム』で私の記憶に残っているのは何より主人公である隊 長、グー・ズーティ(谷子地)の苦悩です。映画の後半、彼は取り憑かれたように自分の部隊の存在証明のみに生きるのです。
兵士として死ぬということは、「烈士」として名誉の死と扱われるか、「失跡」かなどでその後も遺族の米の割り当てが異なるなど無情な扱いが待っている。面 子が大事な中国においては一大事でしょう。グーには58年に解放勲章が贈られたましたが、彼には名誉回復以上に罪滅ぼしをして、日々安眠するためにも必要 な行為だったのでは。 グーの執念で思い出したのが水木しげるの自伝的小説「総員玉砕せよ!」。香川照之主演でNHKでドラマ化もされた原作のあとがきには、「ぼくは戦記物を書 くとわけのわからない怒りがこみ上げてきて仕方がない。多分戦死者の霊がそうさせるのではないかと思う」と書かれている。死なねばならぬ理由がないのに死 んでいく仲間。自分が生き残ったことを申し訳なく感じて生きる重荷。その重圧に耐えるために生まれてきた人間なんていないはずだ。グーの行動は、その重荷 に対処する術なのだろう。 原題の《集結號》とは戦場で吹く合図のラッパのことです。このラッパが意味するものは重く、そして戦争に駆り出された人たちの耳に撤退の《集結號》は死ぬ まで、いや、それは死んでも聞こえない音なのかもしれない。
昨年末から中国・香港で公開中のフォン監督最新作”非誠勿擾”は、フォン作品常連のグォ・ヨウがスー・チーやビビアン・スーと共演したラブコメ。一部北海道で撮影もされましたが、日本で公開の可能性はいかに。

















ヤウ・ナイホイ初監督作品。先月号で紹介した『エグザイル/絆』を楽しんでいただけた方は必見です。93年の『素足のクンフー・ファイター』以降、『ザ・ ミッション/非情の掟』、『エレクション』といったジョニー・トー監督作品の脚本執筆に携わってきた<トーの右腕>、<トー組の頭脳>と称されるヤウ・ナ イホイ、トーのプロデュースにより満を持しての監督デビューです。
役者はトー組『エレクション』の芸達者が集結。アクの強い役柄が多いサイモン・ヤムがいい味を出しています。ナルシスティックな鳴りは潜め、ポコっと出た お腹と曲がったメガネからは優しい目が覗く。普段の役柄とは対照的な理想の上司像です。ボスを演じるマギー・シュウはいつもながらきりっとしていて頼もし い。
この作品は07年の東京フィルメックスで審査員特別賞コダックVISIONアワードを受賞、08年の香港電影金像獎ではヤウ監督が最優秀新人監督賞を、ケ イト・ツィが最優秀新人賞を受賞しました。彼女はサミー・チェンの復帰作として現在香港でヒット中の”大搜査之女”にも出演しています。
なんて素敵なネーミングの特集上映でしょうか。『ブラッド・ブラザーズ ―天堂口―』2月7日(土)の公開前に、その出演俳優たちの作品ほか香港明星(スター)の作品を集めたものです。香港映画の勢いがなくなった。。。という 声が聞こえてくる昨今、香港映画を盛り上げる企画は嬉しい!新作上映ではありませんが、嬉しいことに日本未公開作も大きなスクリーンで見られるのです。そ のうち何本かに触れておきたいと思います。
● 未公開ながら、そのタイトルからもあまりに有名だった『ジェイ・チョウを探して』(03) が上映されます。昨年の東京国際映画祭ではオムニバス作品『愛の十年』上映時に来日、クールな受け答えが印象的だったオーブリー・ラムの初監督作品。ラム 監督は、昨年中華圏で一番賞を受けたであろう<投名状>(『ウォーロード 男たちの誓い』として5月に公開が決定)の脚本チームにも名を連ねています。こちらを見る前に、『冒険王』(96)での若かりし金城武とジュット・リーの競演を見ておくのはいかがでしょうか。
フランシス・ン(『エグザイル/絆』)のファンには彼の髪型遍歴も楽しめる『エンドレス・アフェア』(00)は見逃せません。フランシスは『電脳警察 サイバースパイ』(00)にも出演しています。
『イザベラ』(06)(2008年12月号の記事からの抜粋です。)





