中国語教室 ハンズアカデミー 東京・渋谷・神田|2011年7月 公開中国映画情報

2011年7月 公開中国映画情報

 

『第3回アジアンクィア映画祭』

AQFFは、アジアのクィア映画だけを上映する唯一の映画祭です。アジアのクィア映画、とりわけインディペンデント映画を発掘し、日本ならびに世界へ紹介することを目的として、2007年に誕生しました。過去2回のAQFFでは、後に日本でも劇場公開された『後悔なんてしない』の日本初上映や、台湾の若手実力派俳優モー・ズーイーが主演した名作ドラマ『蓬の花』の日本初上映など、話題作の数々をお届けして参りました。そして第3回目となる今回のAQFFでは、出来立ての新作から知られざる名作まで、全12プログラム、計30作品を上映致します。その内、インターナショナル・プレミアは5作品、アジア・プレミアは3作品、ジャパン・プレミアは19作品です。ここでしか観られない作品が目白押しです。
〜AQFF開催主旨〜

アジアにおけるセクシュアル・マイノリティたちは、欧米に比べ抑圧が厳しく、性的指向を理由に逮捕・死刑となる国も存在します。そのため、彼らの存在は“タブー”であり、私たちの身近において、その姿を見る・知る機会はほとんどありませんでした。しかし、彼らは確かに存在し、様々な活動を通じてその声を上げ始めています。

映画界におきましても、欧米作品に比べると、アジアのクィア作品は制作される機会が圧倒的に少ないのが現状です。しかし、近年良質な作品が次々と発表され、注目を集め始めています。

このような現状にある今、私たちはアジアという身近な環境で制作された作品を通し、アジアのセクシュアル・マイノリティの姿、ライフスタイル、家族や友達、社会との関係の様々なあり方を紹介すること─偏見がまだ残る日本社会に提示していくこと─に大きな意義があると考えています。

その中でも特に、私たちはインディペンデント映画(自主制作映画)を発掘・紹介することに力を入れております。内容に関しての制約が少ない分、より当事者目線で描けるという利点がありながら、商業作品に比べると、発表する場を得るのが格段に難しい自主制作のクィア作品を発掘・紹介することで、当映画祭の意義をより深くすると同時に、新たな才能を発見、日本および世界の映画製作現場を活性化し、映像文化の発展のための一端を担うことを目指しております。
AQFF2011プログラムラインナップ
長編プログラム/7プログラム
オープニングはシンガポールの新鋭監督、ハン・ユークアンがトランス・ジェンダー2人の出会いをコメディタッチで描いた名作『海南、潮州と白いブラ』を上映。そしてクロージングでは今年出来上がったばかりの中国作品『花と眉』を日本初公開で上映します!その他にも第59回ベルリン国際映画祭テディ賞の最優秀長編賞にノミネートされ、各国で高い評価を獲得しながらも日本未公開だった『無声風鈴』を始め、2010年度の釜山国際映画祭でワールドプレミアされ、ベストドキュメンタリー賞を受賞した『チョンノの奇跡』、さらには北京のパンクバンド、New Pantsのボーカルとして若者から絶大な支持を受けているポンレイが撮り上げた『パンダキャンディ』、タイ発のキュートなガール・ミーツ・ガール物語『ジェリーフィッシュの恋』、そしてイスラエルアカデミー賞の8部門でノミネートされたほか、謎めいた美しい女性アノークをフランスの名女優、ファニー・アルダンが演じたことでも話題となった「秘密の祈り」と、話題作の数々をすべて日本初公開でお届けします。
短編プログラム/4プログラム
毎回AQFFでしか観られない、貴重な作品の数々を上映する短編集では、『881 歌え!パパイヤ』のロイストン・タンが初めてゲイを真っ向から扱った短編『アニバーサリー』や、ハワイ国際映画祭で観客賞を受賞した爆笑コメディ『アジュンマ!正気なの???』、ベルリン国際映画祭で上映された『マサラ・ママ』、そして米軍の同性愛者差別政策「Don't Ask, Don't Tell」に立ち向かい、初めて公にカミング・アウトしたダン・チョウのとある一日を静かに見つめたドキュメンタリーなど、今回もバラエティ豊かな作品が勢揃い。
AQFFセレクションプログラム/1プログラム
韓国の映画会社「ジェネレーション・ブルー・フィルム」の代表として、青春映画『俺たちの明日』や、韓国で大ブームを巻き起こした革命的なゲイ映画『後悔なんてしない』ほか、これまでに10本以上もの映画をプロデュースしてきたキム=ジョ・グァンス。彼は2007年の秋から、自らが監督となり映画制作をスタート。同性愛に対して未だタブー感が強い韓国において、キュートな俳優たちを起用し、明るくポジティブな作品作り始めた。監督デビュー作は、韓国の人気ドラマ『風の国』でヨジン役を演じたキム・ヘソンが主演を務めた短編映画『少年、少年に会う』。その後、現在までに3本の短編作品を監督している。今回はその3本すべてを上映する特別プログラム!日本では唯一AQFF2009だけで上映された『少年、少年に会う』の再上映に加え、各地のLGBT映画祭で上映され、大人気を博した『ただの友達?』は、なんと20分のメイキング映像を加えた特別版!そしてジャパン・プレミアとなる新作、『愛は100℃』を一挙上映致します。
ゲスト登壇予定:
8日 『海南、潮州と白いブラ』/ 短編集A「君がいるから」
15日 短編集D「隣のあなた」
17日 『花と眉』
※上映作品、タイトル、ゲストなどは変更される場合があります。何卒ご了承下さい。
 

『ミン ウォン:ライフ・オブ・イミテーション展』

7月31日にゲストが来館してのトーク・イベントがあります。お申し込みはこちらから

ミン ウォンは、シンガポール出身のアーティストである。「○○人の」とか、「○○出身の」といった情報は不要であると考える、またはそういった情報が自身のイメージを限定すると考えるアーティストは多い。たとえば少数民族出身で、その民族のアイデンティティーや存在を強く打ち出す作風の人であれば、たとえば「クルド人の」といった説明が必要かもしれない。

ウォンは、広州系ルーツに持つシンガポール華人。第一言語は英語で、シンガポールで中国の伝統美術を学んだ後ロンドンの大学院に進み、十年住んだ後、現在はトルコに次いでトルコ人の人口密度が高いベルリンのクロイツベルグ地区にアトリエを構えている。本人曰く、「当時全くファッショナブルじゃなかったけど」最初にシンガポールの美術学校で中国の美術を学んだのは自分のルーツに関心があったから。

ウォンはイギリスでは美術館で様々な背景、年代、知識レベルの人たちに作品を紹介するガイドの仕事をしていたことがあるという。そして聞き手の関心度や理解度をすぐに把握し、それぞれに即した話法(しては演技法)を身に付けたと言う。その際、自分が「シンガポール人です」と言うと(シンガポールは英国の旧植民地だったにも関わらず)、それを聞いた人はポカンとしたという。それは、シンガポール人のイメージが湧かないから。「日本人です」といった場合、ソニー、侍、アニメ、寿司、満員電車であれ何らかのイメージが連想されるだろう。それは日本が古い国で、基本的に単一民族だからということもあろう。シンガポールはといえば、マレーシアからの独立は1965年。人口の75%近くを占めるのは中華系の人々だが、華人とマレー系の間に流血の人種対立も経ながらも、今でもマレー系(約13%)、インド系(約9%)、残りはその他の外国人が居住する。

人種混合都市国家故に政府は英語教育に熱を入れ、ウォン(71年生まれ)前後の世代の人々は、英語が母語の人々に比べ遜色のない英語を話す人も多く、留学をするなら英国というのが一般的だった。ただ日常シンガポール人同士が話すときは「シングリッシュ」というローカル化された語彙とアクセントを持つ英語が話される。政府はその後、異なる方言を話す中華系の人々に共通言語を与えようと、標準語とされる「マンダリン(華語。基本は北京語/普通話と共通である)を話そう、方言はやめよう」キャンペーンを打ち立てた。

ヨーロッパでウォンは、誰にでもなれるという利点を見出した。つまり彼は表現者として自由を得たのだ。一人何役も演じるというスタイルで、05年に彼がまず取り上げたのはかつての自分の、そしてシンガポールのルーツであるマレー文化。それを集約するのは子供時代にウォンがテレビで見たシンガポール映画の黄金時代のスターで監督、脚本、主演、楽曲を手掛け自らも歌うP.ラムリー(1929-1973/マレーシア人)の映画。もうマレー語は話せないウォン世代、そしてよりイスラム色が濃くなった現在のマレーシアではタブーとなった表現やテーマ;姦通、殺人や肌の露出を含む映画へのオマージュ。「フォー マレー ストーリーズ」では、4本の映画の16人の役柄に扮したウォンがいくつかのシーンの中の台詞を繰り返し発し、徐々にマレー語が板についていく様を捉える。

「イン ラヴ フォー ザ ムード 華様年花」(09)の元の題材は、もちろんウォン・カーウァイの『花様年華 <In the mood for love>』(00)であるが、ここでは映画ではトニー・レオンが演じたチャウと、マギー・チャンが演じたチャンをニュージーランド人の女優が一人で演じる。広東語を話せない彼女に、ウォンが台詞を読み助ける声も作品の一部だ。そしてこの作品はモニターが三台並んでいるが、左に行くほど女優の演技も広東語も上手くなる。一番右のモニターは一番ダメな演技と台詞を集めたもの、中央はそここそ、左はベスト・テイクを繋げている。本来映画はベスト・テイクのみを繋げたものだが、ここではすべて見せる、ウォンはこれを「リハーサルのリハーサル」と呼んでいる。

同じく09年の「ライフ オブ イミテーション」は、アメリカで人種問題を初めて真っ向から描いた1959年のダグラス・サーク監督(ドイツ出身。妻がユダヤ人だったためアメリカへ亡命。)作品『悲しみは空の彼方に イミテーション オブ ライフ』の1シーンを扱う。黒人の母、白人との混血で、白人として生きることを選んだ女優志願の娘、娘のショーガール仲間の三人が登場するが、ウォンはこれをシンガポール人の中華系、マレー系、インド系の男優に入れ替わり立ち替わり演じさせることで、人種の違いを浮き彫りにしている…、いや、人種の境を曖昧にしているばかりか、性別まで超えている。

今回の展覧会では展示されていないが、ウォンはその後もドイツ語でファスビンダー監督のトルコ人とドイツ人女性の恋愛とその苦難を描いた『不安と魂』(74)を題材にした<Angst Essen / Eat Fear >(08)、イタリア語でパゾリーニ監督の『テオレマ』(68)を題材にした<Devo partire. Domani / I must go. Tomorrow>(10),ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』(71)を題材にした<Life & Death in Venice>(10)を発表している。映画通な選択であると同時に、自己の存在・アイデンティティーを問い直す・脅かすもの、老いへの焦りなどが投影され、シリアスなようで時に笑いを誘う。「のっぺり」というのは褒め言葉ではないかもしれないけれど、ウォンはそのメイク映えする誰にでもなれる表情、そしてすらっとした肢体を活かし、少年にも女性にも驚くほど妖艶に化ける。不安を掻き立てながら、作品をある種コメディに作り変えているのは秀逸。最新作でウォンは、男性から女性に性転換したトルコ人のディーバ/人気歌手、ブレント・エルショイ(Bulent Ersoy)に扮している。彼女は一時は弾圧されドイツに移住したが、政権交代後に帰国。クルド人迫害の内戦で、息子を兵に取られた母親たちを代弁し、男から女、今ではトルコの母親たちの声を代弁している。

ウォンはもの静かで控えめな印象だが、一度役になりきるとすごい。ただ、なりきるといっても「上手く」演じることが目的ではなく、外国語で演じる時は、その言語の意味を解さないレベルでないと彼の作品は成立しないと。例えばドイツ語作品も、ドイツに住んで初期の頃、他者であり異邦人だから出来たとのこと。

ウォンの映画に関する考察は、かつての映画は誰(どこの国の何語を話す人か)に向けて作られるかが明確なナショナル・シネマだったが、映画もグローバル化した今、土着性が薄れワールド・シネマで溢れている。確かに国外の映画祭や外国では上映されても、国内で配給されない映画も多い。

今年40歳のウォンは、『ベニスに死す』に登場する初老の男より20歳若く、美声年より20歳年上だと言った。自分自身、そしてアーティストとしての立ち位置を確認している節目の年ながら、彼のスタイルは確立され、さらに今後の自由な展開が期待できる。周りのサポートに恵まれ、今回の原美術展での展示もスタッフの展示を最高に見せようという心意気が感じられる。記者会見では、キュレーターのタン・フークエン氏が原美術館という作品を見せるのに最高の「映画館」を見つけたいきさつを語っている。

今回の展示では、ウォンの映画への愛と郷愁が詰まっている。古い映画館を訪ねて撮ったポラロイド写真、シンガポール最後の映画看板絵師、ネオ・チョンテク氏に画家として依頼をした作品、今までも福岡アジア美術館のアーティスト・イン・レジデンスでの日本との合作映画や、昨年の東京国際映画祭AQFF2009での上映など日本とも縁の深いマレーシア出身の映像作家、シャーマン・オンによるモキュメンタリー(ドキュメンタリーの形式で撮られた一部、または全部フィクション)映像。昨年の来日時にも語っているように、「ドキュメンタリーとフィクションの間に線引きをすることには、あまり意味がない」と思っているオン監督らしい作品です。オン監督のビデオ作品にも登場するのがシンガポール映画の歴史を語るチラシやポスターといった品々をこつこつと集めてきた個人収集家ウォン・ハンミン氏。第二次世界大戦中のシンガポールにおける日本映画上映や、アジア映画の日本語チラシなど貴重なコレクションは必見です。7月31日にはウォン氏が来館してトークを行います:「カチャンプテからポップコーンまで:シンガポールの初期映画館(1896~1945年)」。こちらは入館料のみで参加することが出来ます。席に限りがありますので、お申し込みはどうぞお早めに。

ご意見・ご希望などございましたら下記までお願いします。
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松下由美・・・・東南アジアとヨーロッパに長く滞在。
映画祭・映画イベントの司会・英語通訳や映画撮影の製作を担当している。
アート、インディペンデント系、アジア作品を多く担当し、中国語圏作品好きも高じて中国へ短期留学経験あり。
Sintok シンガポール映画祭実行委員。
URL:http://www.sintok.org/
MAIL:chinesefilms{at}mail.goo.ne.jp

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